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静かな門出
この春から東京で新生活を始められるT様、息子さんと、お母さまが来店された日のことです。
寝具一式を選んでいただきながら、お母さまは少し寂しそうで、でもどこか誇らしげで。 お支払いのとき、息子さんが迷いなくご自身のカードを差し出された姿に、静かな頼もしさを感じました。
聞けば、ご主人さまは現在東北に在任されており、その前の東京赴任の頃から数十年にわたり単身赴任が続いているとのこと。息子さんが旅立てば、お母さまはご自宅にお一人に。
思わず「ちょこちょこ、実家に帰ってあげてくださいね」と、余計なことを言ってしまいました。
うちにも小さな子どもがいますが、いつか同じように旅立つ日が来るのだろうなと、胸の奥があたたかく、少しきゅっとなりました。
その日は、寝具一式を選んでいただいたあと、ベッドフレームはご予算の都合もあり、「ニトリさんやネットでもリーズナブルなものがありますよ」とお伝えし、ご自身で探されるということでお帰りになりました。
ところが数日後、「いろいろ見たのですが、見れば見るほど分からなくなってしまって…厚かましいお願いですが、何かおすすめはありますか」とご連絡がありました。
そこで、うちでは扱っていない九州の某・総合家具メーカーさんの大阪ショールームをご紹介したのですが、最終的にそこでも決めきれず、再び足を運んでくださり、うちの総桐ベッドを選んでくださいました。
正直、ベッドは他所で買っていただいても構わないと思っていました。 息子さんが東京で気持ちよく眠れ、元気に暮らしてくれたら、それで十分だと。
それでも、あの日のお二人の姿を思い出しながら、また戻ってきてくださったことが、なんだか胸にしみました。 遠くからのご来店、大切な寝具を任せてくださったこと、それが何より嬉しく、心があたたかくなりました。


